野良猫トラと黒猫ルナ

トラが大好きな公園に大きな切り株があります。
この切り株の上で昼寝するのがトラの日課です。
いつものように気持ちよく寝ていると声が聞こえてきました。
「ちょっとそこどいてくれない」
寝ぼけ眼で声のする方に顔を向けると、ピンと真上にしっぽを立てた真っ黒い猫がツンと澄まして立っていました。
「ねえ、早くどいてよ」

「なんだよせっかく気持ちよく寝ていたのに」と不機嫌そうに答えたものの、
トラは一目でその黒猫に恋をしてしまいました。

「君の名前はなんていうの?」

「ルナ」

「僕はトラっていうんだよ」

「あっそう」冷たい素振りでルナは答えました。

「ところでこの切り株で君もお昼寝したいの?」

「何言ってるの?この切り株がどういうものか知らないの?」
ルナはあきれたように聞き返しました。

「えっ!どいうものかって?ただの切り株でしょ!」

「ああ、これだから地球の猫ってめんどくさいわ」

「説明するより見せてあげるから早くどいてよ」

トラは立ち上がってゆっくり切り株から降りました。
するとルナはサッと切り株の真ん中に上ってブツブツと何かいいながらくるりと回ると
パッと消えてしまいました。

「ひえ~、ルナが消えちゃった」
びっくりしてトラは腰を抜かしてしまいました。
するとパッとルナがまた切り株の真ん中に現れました。

「びっくりしたなぁ。いったいどうなっているの?」

「この切り株はテレポーテーションするための入り口なのよ」

「えっ!テレポーテーションって何?」
トラは初めて聞く言葉にとまどっていました。

「つまりね、行きたい所に一瞬で行けるどこでもドアみたいなものよ」

「ああそれならわかるよ。それでルナはどこに行ってきたの?」

「お月様よ。私の生まれたところ」

「お月様ならぼくもジョージと行ったことがあるよ」

「あらそうなの?とってもステキなところでしょ!」

「うん、また行ってみたいなぁ」

「それならじゅもんを教えてあげるわ」

「へえーさっきブツブツ何か言ってたのがじゅもんだね」

「いい?1回しか言わないから、忘れないでね」

「きりぶう、きりぶう、くるくるまわれ、くるくるまわって、おつきさまにとどけておくれ」

「わぁ、おもしろいじゅもんだね」
これでいつでもお月様に行けるのでトラは嬉しくってピョンピョン跳びはねました。

「ところでルナも野良猫なの?」

「いいえ、わたしは大好きなあすかちゃんの家で暮らしていたの」

「暮らしていたのってどいうこと?今は違うの?」

「うん。もうお月様に帰る日が来たの」

「みんなとお別れするのはとっても悲しいけれどそれが約束だから」

ルナはお月様からこの地球にやって来た猫でした。
それでテレパシーで「なまえはルナ(お月様)にして」とお願いして付けてもらいました。

今日は満月、約束の日です。
みんなに知らせず帰ることはとても悲しいけれど、いつでも思い出した時、そばにいるから。
そして姿は見えなくてもわたしを感じてくれるって分かるからだいじょうぶ。
ルナはそう信じています。

トラはきっとこれからちょこちょこ大好きなルナに会いにお月様に行くでしょう。
お月様を見上げたらルナのことを思い出してね!

「きりぶう、きりぶう、くるくるまわれ、くるくるまわって、おつきさまにとどけておくれ」


おしまい





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